7/11 「”EMERGENCY” FREE LIVE SHOW」について
「宮下公園アーティスト・イン・レジデンス(以下A.I.R)」では公園に足を運んだ人たちが出会い、楽しみ、話し合えるような場を作ったり、公園を与えられたものではない形で利用していく意味を込めてイベントを催しています。A.I.Rが自ら企画し主催することもあれば、共催という形でイベントを行なうこともあります。イベントに足を運んだ人たちやイベントを共催する人たちに対して、A.I.Rが管理人のような立場にならぬよう、また、させられぬよう、私たちはみんなで一緒にその場所を作っていくように心がけています。
私たちが宮下公園にテントを張り、滞在制作を始めた3月15日から3月17日を第一弾A.I.Rとすれば、それ以降は第二弾A.I.Rとして多くのイベントが催されるようになりました。その中の一つとして7月11日の共催のライブ「”EMERGENCY” FREE LIVE SHOW」は行なわれました。
結論からいえば、今回のイベントに対して三度の警察の介入があり、ライブは途中で打ち切りとなりました。出演7バンドのうち3バンドは演奏をできぬまま終わらざるえませんでした。単なる音量の問題ではなく、警察は二度目の介入から明らかにこれまでのA.I.Rの取り組みに対しての政治弾圧の姿勢で臨んできました。3月16日に宮下公園の原宿側のフェンス封鎖を阻止して以来、一見、公園はのどかな無風状態のように見えていたかもしれませんが、常に緊張状態にあったといえます。区や警察といった権力は、常に私たちを排除せんと公園の様子を伺っていたでしょう。
また公園を誰もに開いていく日常的な試みの中で、無意識ながらも、声の大きい人、威圧的にふるまってしまう人、女性や立場の弱い人を軽視する発言をする人が公園を訪れ、声をあげることなく公園から遠のいてしまう人たちが出てきてしまうケースもありました。私たちはそのような日常的なレベルでの排除に対しても、より安全な公園を作るという趣旨で対話やワークショップを行なってきました。またテントの存在やA.I.Rの人たちが常に公園にいることによって公園に立寄りにくく感じる人に対しても、誰もが休むことのできるベンチを作ったりしながら「みんなの公園を作る」というプロジェクトを開始しています。最近のイベントでのアルコールの持ち込みについて「ご遠慮ください」「配慮してください」と明記するようになったのは、一見すると不自由に受け取られていたかもしれませんが、多様な人たちが集う公園での「自由」と「安全」について、いま・ここで根底的に考えていく試みの一端であったことを理解していただければと願っています。11日のライブイベントは、ナイキパーク化を阻止しながら「公園をひとびとが作る」という試みが孕んでいる複数の力を一見のどかな公園に顕在化させた点で意義があったと私たちは考えています。
演奏中の音を止めて様子を伺う、状況説明をしようとする人のマイクを奪って演奏を始めるーー警察の介入時において出演したミュージシャンたちの対応もさまざまで、「表現と場」についての問題も先鋭的に出されたと考えています。海外のある政治的な場でのライブでは、警察の介入があった際にステージ上からみんなと一緒になって闘ったミュージシャンがいました。私たちは、これらいずれに対しても直ちに判断を下すのではなく、表現、自由、安全、公共空間について考え、対話を続けることによって「公園をひとびとが作る」試みを多くの人と一緒に実践していきたいと思います。
11日のイベントではA.I.Rとして「セイファー・スペース」の取り組みも行なっていましたが、その成り立ちや意図が必ずしもみんなにきちんと伝わっていない様子でした。また警察介入にあたって出演アーティストや来場者に対して、しかるべき情報共有ができていなかったところがあります。混乱があったとはいえ、これらについては「みんなで一緒にその場所を作っていく」という私たちの試みが十全ではなかったと言わざるえませんが、だからこそ今後もこの取り組みを継続していきたいと考えています。
最後に。警察は「公園ではなくライブハウスで演奏すればいいんだ!」と私たちに言い放ちました。警察の言い放った言葉を私たちは反転させましょう。ライブハウスは公園ではありません。公園に集い、表現することについて11日のライブに立ち会った人たちは、それぞれで考えを反芻し、深めて欲しいと私たちは願っています。そして、また再会しましょう。イベントだけではなく、日常の静かで力強い公園の中で。
(宮下公園 アーティスト・イン・レジデンス)
※PINPRICK PUNISHMENTの文章はこちら
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